肝臓内科とは

肝臓内科

肝臓内科は、肝臓を中心に胆のうや胆管、膵臓に関わる病気を専門的に診療する診療科です。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、病気が進行するまで自覚症状が現れにくい臓器です。そのため、健康診断で異常を指摘された場合や、肝機能が気になる方は早めの受診が重要です。肝臓病は慢性的に進行するものが多いため、適切な診断と治療で病気の進行を抑え、生活の質を維持することが大切です。

当院では日本肝臓学会認定 肝臓専門医・指導医の院長が、より専門性の高い診療をクリニックにて行っていきます。より高度な医療環境が必要と判断しましたら、大学病院などの医療機関と連携して治療を行っていきますので、健診等で肝障害を指摘された場合は、お早めにご受診ください。
健康診断で肝機能異常(AST、ALT、γ-GTPの上昇)を指摘された場合、症状がなくても、お早めに肝臓内科を受診することをお勧めします。

肝臓内科では、主に以下のような肝臓や関連臓器の疾患を診療します

  • ウイルス性肝炎
    B型肝炎やC型肝炎などのウイルス感染による肝炎で、慢性化すると肝硬変や肝がんのリスクが高まります。
  • 脂肪肝・非アルコール性脂肪肝炎(MASH)
    脂肪肝は過剰な脂肪が肝臓に蓄積した状態で、放置するとMASHに進行し、肝硬変や肝がんの原因になることがあります。
  • アルコール性肝疾患
    過度の飲酒によって起こる肝障害で、脂肪肝、肝炎、肝硬変へと進行することがあります。
  • 原発性胆汁性胆管炎(PBC)、自己免疫性肝炎
    自己免疫の異常によって肝臓が攻撃される病気で、進行すると肝硬変になることがあります。
  • 肝硬変
    慢性的な肝障害が進行し、肝臓の組織が線維化して硬くなる状態です。腹水や黄疸、肝不全などの症状が出ることがあります。
  • 肝がん
    肝炎ウイルス感染や脂肪肝、肝硬変が原因となり、肝臓にがんが発生します。定期的な検査での早期発見が重要です。

肝臓内科で行う検査

肝臓の病気を診断するために、以下のような検査を行います。

血液検査

AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、ビリルビン、アルブミン、HBV・HCV抗体などを調べ、肝機能や炎症、ウイルス感染の有無を確認します。

腹部超音波検査(エコー検査)

肝臓の大きさや形、脂肪肝の有無、腫瘍や胆石の有無を調べます。放射線を使わないため、安全に行える検査です。

線維化評価検査(エラストグラフィ)

肝硬変の進行度を非侵襲的に調べるために行われる検査です。右脇腹の表面に振動と超音波を伝える特殊な「プローブ」をあて、その振動と超音波の伝わり方から肝臓の硬さや肝臓の脂肪量を測り、線維化の進行度を評価します。

肝臓内科で行う治療

肝臓の病気に対する治療は、原因に応じて異なります。例として、以下のようなものがあります。

ウイルス性肝炎の治療

B型肝炎には抗ウイルス薬を用いてウイルスの増殖を抑えて肝炎が起こらないようにします。C型肝炎にはインターフェロンフリーの経口薬が用いられ、ウイルス排除を目指します。

脂肪肝・NASHの治療

食事療法や運動療法を中心に、生活習慣の改善を行います。必要に応じて、糖尿病や脂質異常症の治療薬を使用します。

アルコール性肝疾患の治療

禁酒が最も重要で、肝障害が進行している場合には薬物療法を行います。

肝硬変の治療

食事療法、利尿薬による腹水の管理、肝性脳症の治療など、症状に応じた治療を行います。

肝がんの治療

外科手術、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)など、がんの進行度に応じた治療を選択します。

胆石症とは

胆石症は、胆のうや胆管に結石(胆石)ができる病気です。胆石はコレステロールや胆汁の成分が固まってできるもので、大きさや数は個人によって異なります。胆石ができても無症状のことが多く、健康診断や別の病気の検査中に偶然発見されることもあります。しかし、胆石が胆のうや胆管に詰まると激しい痛みや消化器症状を引き起こし、治療が必要になることがあります。発症しやすいのは、コレステロール値の高い方、40代の方、女性の方、肥満の方とされています。

胆石症の症状

胆石があるだけでは症状はありません。しかし胆石が胆のうや胆管に詰まると、様々な症状が現れます。最も典型的なのは、右上腹部に突然起こる強い痛み(胆石発作)です。この痛みは脂っこい食事をとった後に起こることが多く、背中や右肩にも広がることがあります。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、症状は数十分から数時間続くことがあります。また胆汁の流れが滞るため、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、発熱、寒気を伴うこともあります。これらの症状が現れた場合は、早急な治療が必要です。

胆石ができる原因

胆石の主な原因は、胆汁の成分のバランスが崩れることです。胆汁に含まれるコレステロールが増えすぎたり、胆のうの働きが低下して胆汁が停滞したりすると、胆石が形成されやすくなります。肥満や高脂肪食、糖尿病のほか、妊娠や女性ホルモンの影響でも胆石ができやすくなることが知られています。また、加齢や遺伝的要因も関係しており、家族に胆石症の人がいる場合は注意が必要です。

胆石を放置するとどうなるか

無症状の胆石であれば、特に治療をしなくても問題ありません。しかし、胆石が胆のうや胆管に詰まると、胆のう炎や胆管炎、膵炎などの重篤な合併症を引き起こす場合があります。

胆のう炎になると、高熱や腹痛が続き、放置すると胆のうが破れて腹膜炎を起こす危険があります。また、胆管炎になると、細菌感染により全身の状態が悪化し、場合によっては命に関わることもあります。膵炎を併発すると、激しい腹痛とともに消化酵素の異常活性化により膵臓がダメージを受け、重症化することがあります。こうしたリスクを避けるため、症状が出た場合は放置せず、早めに医療機関を受診することが重要です。

胆石症の治療

無症状の胆石であれば、経過観察を行うことが一般的です。胆汁の流れをよくする薬や胆石を溶かす胆石溶解薬を用いる治療法もありますが、効果が現れるまでに時間がかかるため、すべての胆石に適応できるわけではありません。しかし、胆石発作を繰り返す場合や、胆のう炎を合併している場合は治療が必要になります。

胆石症の根本的な治療としては、胆のうを摘出する腹腔鏡下胆のう摘出術が一般的です。この手術は小さな傷口からカメラと器具を挿入して行うため、身体への負担が少なく、入院期間も短くて済みます。総胆管結石に対しては、内視鏡治療を行います。

肝がんとは

肝がんは、肝臓に発生する悪性腫瘍の総称です。日本では肝がんというと「肝細胞がん」を指すことが一般的です。これは肝臓の細胞が異常増殖し、腫瘍を形成することで発症します。肝がんは進行が早い一方、初期には自覚症状がほとんどないため、定期的な検査による早期発見が重要です。とくに慢性的な肝疾患を持つ人は、肝がんのリスクが高いため注意が必要です。

肝がんの症状

肝がんの初期段階ではほとんど症状が現れません。しかし、病気が進行すると、以下のような症状が見られることがあります。

  • 倦怠感や食欲不振、体重減少
  • 右上腹部の違和感や痛み
  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 腹部の膨満感や腹水
  • 発熱(微熱が続く)
  • など

これらの症状が現れた場合は、すでに病気が進行している可能性があるため、早めの検査が必要です。

肝がんは、肝臓内で腫瘍が大きくなりながら進行し、放置すると血管や周囲の組織に広がります。さらに、がん細胞が血流に乗って肺や骨など他の臓器に転移することもあります。肝硬変を伴っている場合は、肝臓全体の機能が低下し、治療の選択肢が限られるため、できるだけ早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。

肝がんの原因

肝がんは、さまざまな原因によって発症する病気です。その中でもとくに多いのがB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)による感染です。これらのウイルスに感染すると、長期間にわたり肝臓に炎症が続き、やがて肝硬変を引き起こし、最終的に肝がんへと進行することがあります。中でもC型肝炎は日本における肝がんの大きな原因の一つです。

肝硬変は、慢性的な炎症によって肝臓の組織が硬くなり、正常な細胞が減少する状態で、多くの肝がんは肝硬変の背景で発生します。また、遺伝的要因も無関係ではなく、家族に肝がんの患者がいる場合はリスクが高くなる可能性があります。

近年問題となっているのが脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎による肝がんの発症です。脂肪肝は、肝臓に過剰な脂肪が蓄積する状態で、これが進行すると肝臓の炎症や線維化が進み、がんのリスクを高めます。肥満や糖尿病のある方は注意が必要です。一方で、アルコールの過剰摂取も肝臓に強い負担をかけ、肝硬変を経て肝がんへと進行するリスクを高めます。

参考→脂肪肝のページ