便通異常とは

便通異常とは、通常の排便リズムが乱れたり、便の状態に異常が見られたりする状態を指します。一般的に、便秘や下痢が代表的な症状として挙げられますが、これらが交互に繰り返される「交替性便通異常」も含まれます。
便秘は排便の回数の減少や、便が硬くなって排出しにくくなる状態がみられるもので、腹部の張りや残便感を伴うことがあります。一方で、下痢は通常よりも便が軟らかくなり、水のような便が頻回に排出される状態を指し、腹痛や脱水症状を引き起こすことがあります。
便通異常の原因には、食生活の乱れ、ストレス、運動不足、腸内環境の変化、何らかの疾患や薬の影響などが関係しています。症状が長期間続く場合や、血便、激しい腹痛を伴う場合は、お早めにご受診ください。便通異常は一時的なものから慢性的なものまであり、放置すると生活の質が低下し、重大な疾患のサインである可能性もあるため、早めの診断と治療が重要です。
便秘(慢性便秘)とは
便秘(慢性便秘)とは、排便の回数が減ったり、便が硬くて排出しにくくなったりする状態を指します。一般的に、週に3回未満の排便しかない場合や、排便時に強くいきむ必要がある、便が硬くて出にくい、すっきりしないといった症状が続く場合、慢性便秘と診断されることがあります。特に、これらの症状が3か月以上持続すると「慢性便秘症」と呼ばれます。
便秘の症状
便秘の症状には、腹部の張りや違和感、排便時の痛み、残便感、食欲不振などがあります。さらに、便秘が続くと腸内で便が長時間とどまり、悪玉菌が増えることでガスが発生し、お腹の張りや不快感を覚えることもあります。
便秘のタイプ
慢性便秘には、いくつかのタイプがあります。腸の動きが低下し、便の移動が遅くなる「弛緩性便秘」、腸が過敏に反応して排便がうまく進まない「けいれん性便秘」、直腸に便が溜まっても排出しにくくなる「直腸性便秘」などが代表的です。また、便秘と下痢を繰り返す「交替性便通異常(過敏性腸症候群)」もあり、ストレスが関与することが多いとされています。
便秘の原因
便秘の原因には、生活習慣の影響が大きく関与します。食物繊維や水分の不足、運動不足、排便を我慢する習慣、ストレス、自律神経の乱れなどが主な要因です。加齢によって腸の働きが低下することも便秘の原因となります。また、大腸がんや炎症性疾患によって便の通過が妨げられたり、糖尿病や甲状腺機能低下症などの病気、鎮痛剤や抗うつ薬などの薬の影響で大腸の動きが弱くなったりすることでも便秘が起こる場合があります。
便秘の治療
これらの方法で改善が見られない場合、薬物療法が検討されます。便を柔らかくする薬や腸の動きを促進する薬があり、症状や体質に合わせて選択されます。自己判断で市販の強い下剤を使い続けると腸の機能が低下することがあるため、適切な薬の使用は医師と相談しながら進めることが大切です。
下痢(慢性下痢)とは
下痢(慢性下痢)とは、通常よりも軟らかい便や水様便が頻回に排出される状態が長期間続くことを指します。一般的に、1日に3回以上の軟便や水様便が続き、3週間以上にわたって持続する場合、「慢性下痢」と診断されることがあります。一時的な下痢は感染症や食生活の影響によるものが多いですが、慢性下痢は腸の異常や病気が関与していることが多く、適切な診断と治療が必要です。
下痢の症状
慢性下痢の症状には、頻繁な排便、腹痛や腹部の不快感、便の形状が一定せず軟便や水様便が続くことが挙げられます。場合によっては、血便や粘液を含む便が見られることもあり、全身の倦怠感や体重減少を伴うこともあります。下痢が長期間続くと、体内の水分や電解質が失われ、脱水症状を引き起こすことがあります。
下痢のタイプ
慢性下痢にはいくつかのタイプがあります。腸の運動が過剰になり、内容物が速く通過することで水分が十分に吸収されない「分泌性下痢」、腸が水分を吸収できずに便が水っぽくなる「浸透圧性下痢」、腸の炎症や感染による「炎症性下痢」、消化不良や吸収不良による「脂肪性下痢」などが代表的です。また、ストレスや生活習慣、自律神経の乱れが関与する「機能性下痢」も少なくありません。また便秘と下痢を繰り返す「過敏性腸症候群」もあります。
下痢の原因
慢性下痢の原因は多岐にわたります。食生活の影響として、過剰な脂肪摂取、乳糖不耐症、香辛料やアルコールの摂取が腸を刺激し、下痢を引き起こすことがあります。また、細菌やウイルスによる慢性的な腸の感染、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、甲状腺機能亢進症や糖尿病などの内分泌疾患も原因となります。ストレスや緊張による腸の過敏な反応(過敏性腸症候群(IBS))も、慢性的な下痢を引き起こす要因のひとつです。
下痢の治療
慢性下痢の治療では、原因を特定することが重要です。そのうえで、まず生活習慣や食生活の改善を行います。脂肪分の多い食事や乳製品、カフェイン、アルコールを控え、消化しやすい食品を摂ることが大切です。水分補給も重要で、スポーツドリンクや経口補水液を利用すると効果的です。ストレスが関与する場合は、リラックスを心がけ、規則正しい生活を送ることが改善につながります。
薬物療法としては、感染が疑われる場合は腸の動きを抑える薬や整腸剤、抗生物質などが用いられます。炎症性腸疾患の場合は、ステロイドなどの消炎剤や免疫調節剤などが用いられます。過敏性腸症候群による慢性下痢には、腸の過敏性を調整する薬が処方されることもあります。自己判断で下痢止めを使用すると、原因によっては病状が悪化することがあるため、医師の指導のもとで適切な治療を受けることが大切です。